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グアムではアメリカ同様に8月から9月にかけてが新年度の始まり。小学校から大学まで、学生たちは新たな気分で学校生活を始めています。マンギラオにあるミクロネシア唯一の総合大学であるグアム大学でも長い夏休みが終わり、学生達がキャンパスに戻って来ています。

そのキャンパスの一角にあるイスラセンターは、グアム大学の生徒や教授陣の作品展だけでなく、さまざまなテーマで島内外からのコレクションを集め貴重な展示会を数多く開催しているミュージアムです。今回"ストーリーボード・オブ・ミクロネシア"展が開催されると聞いて、早速出かけてみました。

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今回の展示の中で一番古い1951年の作品。
村の男たちが集まったアバイ(集会所)の模様がモチーフになっています。
ストーリーボードは、パラオ諸島の伝統文化として知られる板彫りの工芸品です。文字を持たなかったパラオの先人が男性の集会所であったアバイの切妻や梁に、歴史や伝説を絵文字として残していたものを木版に複写したのがはじまりです。意外なことに、ストーリーボード自体の誕生は1931年と歴史は浅く、日本統治下にあったパラオの絵文字文化の消滅を危惧した日本人の彫刻家土方久功氏の提案によって板彫りの手法が考案され今日に受け継がれています。



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こちらのストーリーボードは「パラオの起源」という伝説がモチーフになっています。
その伝説とは太古の昔、とある島に住む夫婦に一人の息子が生まれました。その子は驚くべき食欲で、もの凄い速さで成長しました。夫婦二人ではとうてい養いきれず、 村中で養っていました。困り果てた村人達は相談し、その子を殺すことにしました。村人は大きな斧で彼の身体を斬りつけました。その切り離された体のそれぞれが今のパラオの起源となったというお話です。



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この2つのストーリーボードはともに「ヤップの石貨」という伝説が表現されています。
大昔、ヤップの人々はパラオの南250kmにあるロックアイランドの洞窟の中に、加工するのに最適な石灰岩質の岩脈を発見したのです。何世紀にも渡りカヌーに乗った男達がヤップから訪れ、石貨を切り出して帰ったのです。石貨の価値は石灰岩の美しさや発掘の苦労の度合いで量られたといいます。そんな石を切り出すヤップの人たちを描いています。



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こちらは「亀の時間」という伝説。パラオでは、女性達は亀の甲羅から作った特別な貨幣を使っていました。
ある夜のこと、ペリリュー島の青年とアラカベサン島の少女が密かに夜を過ごしていた時のことです。朝になり少女が目をさますとスカートの一部が引きちぎられ、浜に向かって亀の這った跡がありました。次の約束の日、二人は大きな亀が浜を上がってくるのを見つけました。よく見ると、 少女のスカートが亀の足に絡まっているではありませんか。この出来事がきっかけで、亀が卵を産んだ後、およそ二週間で同じ場所に戻ってくるという亀の習性をパラオの人たちが知ったというお話です。


今回はパラオ人の作品の中にグアムの作家によるものも展示されていました。グアムの伝統を継承するマスターの称号を持つロバート・タイタノ氏(Master Robert Taitano)の作品です。独学で彫刻をはじめ40年、グアムの伝説やグアムのモチーフをイフィットの木や家具、カムズと呼ばれるココナツの実を削るツールなどに彫ってきました。今回展示された作品にはグアムの伝説が描かれています。

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タイタノ氏が使うのはイフィットというグアムで一番堅く重い木。
古くから家具に利用され、現在は伐採が禁止されています。
彼は台風の後には倒れたイフィットを手に入れるためジャングルに入ります。



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イフィットに彫られたシレナの伝説。
グアムに昔、シレナという娘がいました。彼女は泳ぎが好きで、いつも海で魚たちと一緒に泳ぎ回っていました。手伝いをしないシレナに腹を立てた母親が、「お前など魚になってしまえばいい」と言ったそうです。ある日、いつもの通りシレナが海で泳いでいると、魚たちが彼女に自分たちの鱗を付けてくれました。嬉しくなって泳ぎ回っているうちに、彼女の下半身は魚のようになり、人魚になったというお話です。



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こちらはカムズの台座に彫られた恋人岬の伝説です。
スペインがグアムを統治していた頃、チャモロ人の美しい娘がいました。スペイン の総監が彼女を気に入り、結婚話が出ました。しかし、チャモロ人の恋人がいた彼女は、結婚式当日に家を抜け出し彼のもとへ向かいます。2人は、互いの髪を結び合わせ、永遠の愛を誓い合うように絶壁の頂上から身を投げたという悲恋の物語です。



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ラッテストーンを象った置物にも恋人岬の伝説が描かれています。


これらの作品の他にも約30点のストーリーボードが展示されています。グアム大学のコレクションに加え、グアム在住の個人のコレクションも多く含まれています。残念ながらパラオでも作家の多くが島を離れ、創作活動をなかなか見ることができなくなっているため、このような展示会は南太平洋の伝統文化に触れられるまたとない機会です。グアム大学のキャンパスをドライブルートに加えてみてはいかがですか?

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民家を改装したギャラリーは入場無料。
残念ながら日本語での解説はありません。


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広大な敷地に広がる緑豊かなキャンパス。
グアム大学ではイスラセンターの他にもブックストア、
ライブラリー、フードコートなど、
一般の方が利用できる施設も多くあります。



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ブックストアではグアム大学のマグカップやTシャツなどのロゴグッズ、
歴史や文化にまつわる書籍も扱っています。



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ファーストフードが並ぶフードコート。
フードコート脇には郵便局もあります。



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ライブラリーには10万冊を超える書籍だけでなく、
プリント、マイクロフィルムなど
ミクロネシア地域最大の蔵書、データベースを誇ります。


<インフォメーション>
グアム大学イスラセンター
"ストーリーボード・オブ・マイクロネシア"展
期間:9月2日(木)~10月8日(金)
営業時間:月~金曜日10:00AM~5:00PM、土曜日10:00AM~2:00PM 
休館日:日曜、祝祭日
入館料:無料
住所:UOG Station, Mangilao, GU 96923
ロケーション:マンギラオ地区
電話番号:671-735-2761/2762
URL:http://www.uog.edu/