地球規模で環境問題が取り沙汰されている昨今、世界各地で環境問題を考慮し、各地域がそれぞれ抱える問題にそった様々な活動を行っています。 ここグアムも例外ではありません。美しい海に囲まれて豊かな緑に覆われ、一見環境問題には無縁に思えるこの島でも、住民が関心を寄せ、グアム政府も力を入れていることとして「不法投棄」「処理場の問題」「ゴミに関する課題」、そして米軍基地拡大による「ジャングルの開発」、地球の温暖化による「海洋生物の生態系の変化」など、実は様々な環境問題を抱えているのです。 今回はグアムの美しい自然を取り戻すべく、そして残された自然をそのまま後の時代へと引き継いでいこうとする、様々な活動やイベントを紹介します。

この美しい海に囲まれたグアムも 実は様々な環境問題を抱えています。

9月17日(土)にアメリカのNGO団体(非政府組織)「オーシャン・コンサーバンシー(Ocean Conservancy)」の主催で、「コスタル・クリーンアップ」が開催されました。これは世界150カ国以上で同時に開催される清掃活動で、グアムは17年前からこのプログラムに参加。ガバナージョセフフローレスメモリアルパーク(イパオビーチパーク)やウマタック湾など17カ所で、午前7時からボランティアによるゴミ拾い活動が行われました。 私もこの活動に参加しましたが、道路沿いに捨てられているゴミの多いこと!澄み切った青い空や美しい海からは想像もできないほどのゴミの量に少々呆れてしまいました。しかし、この日のグアムでは3,000人以上の人々がボランティアとして活動に参加したと聞き、多くの人がこの問題に関心を寄せていることに少し安心もしました。

清掃活動の様子。 私が参加した場所、淡水洞窟「マーボケーブ」には約50名が参加しました。

ゴミを拾いながら、どのような種類のゴミが落ちているかシートに記入していきます。 そしてリサイクル可能な「缶」「瓶」「プラスチック」などは分別して収集します。

環境問題に取り組むにあたって、このような清掃活動はもちろん大切ですが、自分たちが地球規模や地域でどのような問題を抱え、そしてどのように行動しなければならないかを子供たちに教えることも、とても大切です。 毎年「アースデー(地球の日)」にガバナージョセフフローレスメモリアルパーク(イパオビーチパーク)で開催される、グアム環境保護庁主催のイベント「グアム アースデー セレブレーション(Guam Earth Day Celebration)」では、グアムを取り巻く自然環境の課題について、様々な角度から紹介しています。子供たちにもわかりやすいように、ゲームを取り入れたり写真や絵を用意したりと、楽しみながら学ぶことができますよ。

グアム アースデー セレブレーションの様子。 このブースではリサイクルの仕組みについて紹介していました。 (2010年撮影)

こちらではゴミ問題や気候変動など、 グアムの環境について様々な角度から紹介していました。 (2010年撮影)

グアム環境保護庁では、他にも定期的な地域の清掃や植樹、グアムの美しい自然を知ってもらおうとハイキングやシュノーケリングイベントなどを行っています。自分たちの島の美しさを知ることも、環境について考えるいい機会ですね。

グアムの通信会社「GTAテレグアム」では、3年前からグアムの全学校を対象にした「電話帳回収コンテスト」を実施。使わなくなった古い電話帳を学校単位で集め、一番多く集めた学校には賞金が贈られたり植樹祭が行われたりします。昨年集められた電話帳約7万冊は「マルチング(保温や保水の目的で、資材やビニールシートなどで畑の表面の土を覆うこと)」に利用されたそうです。このような資源の再利用はとても大切ですが、一番の目的は、子供たちに電話帳を回収する意味をしっかり理解してもらうことです。

GTAテレグアムの電話帳の巻頭には、 環境への取り組みが紹介されています。 企業が地域を巻き込んでリサイクル活動を奨励しています。

また、グアムのほとんどの学校が「アイ・リサイクル(i recycle)」プログラムに参加。これは「グアム ビジネス パートナーズ フォー リサイクリング(Guam Business Partners for Recycling)」というNPO(非営利団体)が実施しているもので、集めたアルミ缶の重さがお金に換算され、学校に戻される仕組みです。 グアムに輸入される年間のドリンクのアルミ缶は79億本以上。アルミ缶のみの重さにして2.2億ポンド(約1億kg)になります。しかしアルミ缶はリサイクル可能な資源にもかかわらず、残念ながらそのほとんどは廃棄処分となっているのが現状です。昨今のアルミニウムのリサイクル価値から換算すると、このプログラムを通して2億ポンド(約900kg)分のアルミ缶を集めれば、学校へは約1億円が返還される計算になるそうです。 「地域の美化」「子供たちの教育環境の整備」、そして子供たちが「リサイクルの意味」をしっかり理解するという3つの目的で実施されているこのプログラム。わが家の子供たちも、時々思い出したようにアルミ缶を学校へ持って行き、中には学校へ持って行くために分別している家庭もあります。

各学校にはこのようなアルミ缶収集ボックスが設置されています。

このように子供たちを対象にしたイベントは他にもいろいろ開催されていますが、私たち大人は何をするべきでしょうか。

昨年、前グアム準州知事夫人であり、現在はグアム政府観光局の局長を務めるジョアン・カマチョさんが発表した「スタート(start) キャンペーン」では、私たちがすべきことを4つの段階に分けていました。 まずは「住民の意識改革」。現状を知り、その結果が私たちの暮らしに何をもたらすかを理解すること。第2段階としては「私たちに何ができるか、何をすべきか」を考えること。そして「考えたことを日常生活の中で実行に移す」こと。最後は「この活動を継続し、地域に根ざしていく」ことです。

昨年行われたスタート キャンペーン。 「start」とは「Simple Tasks Aimed at Reducing Trash」の頭文字をとったもの。 訳せば「ゴミを減らすために、私たち一人ひとりができる簡単なこと」という意味です。

WEEKLY GUAMでは今までにもグアムの環境について紹介しました。こちらもご覧ください。 http://weekly.visitguam.jp/2010/06/1.html

残念ながら、グアムの人々の環境に対する意識はまだまだ低いのが現状です。しかし少しずつではありますが、このような活動の成果が現れ、人々の意識は変わりつつあるようです。今後も日本から多くの観光客を自信もってお迎えできるよう、私自身も島民の一人としてイベントに参加し、意識を高めていきたいと思います。

アイ・リサイクル(i recycle) http://www.irecycleguam.org/eight_business.html

スタート(start) キャンペーン http://startnowguahan.com/index.html