海底に沈んだ船や飛行機などを潜ることをレックダイビング(Wreck Diving)といいますが、ここグアムのアメリカンタンカー(American Tanker)はアプラ湾内でとても人気のある沈船ポイントです。レックダイビングというと専門のトレーニングもあるくらいなので、身構えてしまう方もいると思いますが、アメリカンタンカーは湾内のポイントのため潮流も少なく初心者でも潜りやすいダイビングポイントとなっています。この沈船は第二次世界大戦終盤に造られた巨大な砂利運搬船で、海底に斜めに傾いて沈んでおり水深は右舷22m前後、左舷16m前後、船底は33m前後にあります。沈んだ理由は戦争中の攻撃ではなく、大戦後に防波堤の建設にともない意図的に沈められたと言われています。このように歴史や背景を知ることで冒険心がさらにかき立てられるというのもレックダイビングの面白さのひとつではないでしょうか。



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沈船アメリカンタンカーの船首を斜め上から見下ろした光景。
その巨大さはダイバーと比べると一目瞭然です。



アメリカンタンカーはアプラ湾の防波堤沿い右側にありますので、ボートに乗船して向かいます。港へはタモンエリアから車で約30分、ポイントまでは港からボートで約15分ほどです。湾内のため外洋ほどの透明度はありませんが、日によっては25mも透明度があることもあります。通常の透明度は平均10m〜15mといったところでしょうか。エントリーは、潜降ロープを伝ってゆっくりと降りていきます。ロープ下の水深は16m前後です。この潜降ロープはボートと海中を結ぶものですが、海中のロープの先端は直接アメリカンタンカーの左舷につながっています。潜降を始めるときは沈船の影すら見えませんが、下へ降りていくうち徐々に船体が見えてきますので、それとともにテンションが上がってきます。



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船の側面をじっくり眺めながら移動しているところ。
水中で見る巨大な人工物はなぜか神秘的に見えます。



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船室の入り口から船内を覗いているところ。
大きめの船室がいくつかあり中に入ることができます。



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船室の天井から光が差し込んでいる様子。
光のシャワーが美しいですね!



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船内には細かい塵がたくさん積もっていますので、
フィンでバタバタせず中性浮力をキープするのがポイントです。



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ダイバーのシルエット。
光と影のコントラストが幻想的です!



アメリカンタンカーの代表的な船室は3つほどあり、中でも1番大きなものは船尾側にあります。3階建てですので各階をじっくり見てみるのもいいでしょう。船室の外側上部には星条旗がつけてあります。これはご愛嬌として故意につけたものですが、ここを潜るダイバー達は記念に国旗と一緒に写真を撮るのがお約束となっています。



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コンクリートでできた3階建ての大きな船室。
最上階はかつて遠くを見るための展望室だったのでしょうか。



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記念にと、星条旗を広げ記念撮影するダイバー達。



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甲板から船の下方へのびる長い長いハシゴ。
吸い込まれそうな暗がりに背筋がゾクゾクします。



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ひとなつこいハタタテダイも私たちと一緒についてきます!



アメリカンタンカーは沈船以外も充実しており、防波堤付近の浅場へ移動すると、珊瑚の森が一面に広がる癒やし系ダイビングも楽しむことができます。この珊瑚エリアは沈船周辺より水がクリアなことが多く、透明度が20m以上あります。それというのも防波堤の向こうが外洋のため、外洋のクリアな水がここへ流れ込んできているためです。



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沈船から少し移動すると美しい珊瑚の森があり、
まるで森林浴してるかのような爽快さを味わえます。



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ミクロネシアの固有種のクマノミ、
ダスキーアネモネフィッシュも浅瀬で見ることができます。



アメリカンタンカーを潜るにはCカードと呼ばれるダイビングの認定証が必要です。船室内は比較的明るいので、沈船にありがちな恐怖感はほとんどなく、初心者ダイバーでも安心してレックダイビングが楽しめるポイントですが、閉所恐怖症の方は船室へ入るのを避けたり、船室に長時間いないようご自身で調整してください。また、暗がりに生息する生物を観察するのがお好きな方は、水中ライトを携帯されることをオススメします。レアな生物に出会えるかもしれません。ストレスなくダイビングを楽しむために、ダイビング前にはガイドさんのブリーフィングをしっかりと聞いておきましょう。もしもに備え、船室内ではぐれてしまった場合の集合場所を聞いておくと安心します。決してひとりで勝手な行動をとることのないよう気をつけ、レックダイビングを楽しんでください。