約2年半に渡る旧日本軍の占領下にあったグアムを、アメリカ軍が奪還したことを記念し制定された「リベレーション・デー(グアム解放記念日 / Guam Liberation Day)」。毎年7月21日には盛大なパレードが開催され、花火が打ち上げられます。解放の日からちょうど70年を迎えた今年は、その戦いに参加したアメリカ退役軍人が来島し、パレード以外にも様々なイベントが開催されました。
現在のグアムは、毎年日本から約100万人もの観光客を迎えています。ローカルの人と触れ合うことができる「チャモロビレッジ ナイトマーケット(Chamorro Village Night Market)」や「デデドの朝市(Dededo Flea Market)」にも、多くの日本人観光客が足を運びます。今年のリベレーション・デーは、この平和な光景が築かれるまでの道のりを振り返り、様々な国の人々が手を取り合い生きていくことの素晴らしさを感じさせてくれる日となっています。
パレードに参加した「サンタ・リタ村」のフロート(山車)。
テーマ・クリエイティビティ・自然の物をいかに上手に利用しているかなど
様々な審査項目をクリアし、ビレッジカテゴリーの
第1位に選ばれたフロートです。
タムニング地区の「チャモロビレッジ(Chamorro Village)」とアデラップ岬のガバナーズオフィス間の道のりを華やかなフロートがパレードする、毎年7月21日の恒例のイベント「リベレーションデー・パレード(Liberation Day Parade)」。今年はいつもとルートが逆になり、チャモロビレッジからのスタートです。そこに設けられた来賓席から、グアム準州知事エディー・バザ・カルボ夫婦、アメリカ下院グアム代表を務めるマデリン・ボダリオ氏、そしてアメリカ退役軍人を始め軍関係者たちがパレードを見学します。
写真手前の青い服を来た方々がアメリカ本土から招待された、
グアム解放の戦いに参加した退役軍人です。
70年の時を経て、この平和で和やかなグアムに見入っているようでした。
パレードには各村、政府機関、民間会社など様々な団体が参加していますが、一番の見ものは各村のフロートです。村長と村人たちが大きなトレーラーの荷台へグアムや各村の歴史、自然、文化をモチーフにデコレーションしているのですが、そのセンスやアイデアは様々です。
こちらは「バリガダ村」のフロート。
古代・スペイン統治時代の衣装に身を包んだ人々や
草木で作られたイルカやカメなどの海中世界がとても素敵です。
沢山の人々に囲まれているこちらは、
「スメイ」という村のフロート。
こちらのフロートを作ったスメイ村はアプラ港の南側に位置し、スペイン統治時代から貿易や商業の中心として栄えた場所です。太平洋戦争中には旧日本軍の軍事施設が集結し、1944年のアメリカ軍によるグアム奪還の際の激しい攻撃の末消滅してしまい、現在のグアム地図には載っていない村となったのです。そしてこの日のみ復活したスメイ村のフロートには、沢山の方がカメラを向けていました。スメイ村のあった場所は現在アメリカ海軍基地となっているため、フロートには海軍の人たちも乗り込み、沿道の人に手を振っていました。
「グアム農務省(Guam Department of Agriculture)」からは
グアムにしかいない絶滅種の島の鳥「ココバード(Ko'ko' Bird)」が登場。
集まった子供たちに大人気でした。
こちらの写真は、今年で100周年を迎えた自動車販売店
「アトキンズ・クロール・グアム」。
フロートからは、各企業のオリジナルグッズやキャンディーなどのお菓子が配られることもあります。今年は自動車販売店「アトキンズ・クロール・グアム(Atkins Kroll Guam)」が、キャンディーと折り畳み式団扇を配っていました。
沿道の人々は早朝から場所を確保し、テントを張り椅子を並べ、ゆっくりとパレードを見学していました。中にはBBQを焼いたりパーティー並みの料理を用意したりして、数時間に及ぶパレードに備えていました。
パレード前には雨が降りましたが、パレード中は曇り空の下、
今年も沢山の人が沿道に集まりました。
こちらは大きなグリルを自宅から運んでBBQ。
日本人の私がカメラを向けると笑顔で応えてくれ、
「BBQも食べて!」とお皿に分けてくれました。
さてスタート地点に戻ると、これからパレードに出発するグループが次々とステージ前でパフォーマンスを披露。グアムの子供たち、韓国やフィリピンの各団体と続きます。
こちらは素晴らしいダンスを見せてくれたフィリピン人のグループ。
リズミカルで華やかな歌とダンスに、大きな拍手が送られていました。
現在「グアム国際空港(Guam International Airport)」の裏側で
開催されている「第70回サマーカーニバル(70th Summer Carnival)」では
この日の夜2回に渡り、花火が打ち上げられました。
私がグアムに来て初めてこのパレードを見に行った時は"リベレーション"の意味を理解しておらず、連れて行ってくれたチャモロ人に意味を教えられた時は、自分の無知を恥じました。しかし「大丈夫、今は日本人は友達だよ!」と優しく言ってくれたことを、毎年この日に思い出します。
現在世界では紛争により、多くの尊い命が犠牲となっています。70年前のグアムでも沢山の命が失われました。今、こうして国籍を超えた沢山の方が一緒に歌い、踊り、拍手を送り、抱き合うことができるのはとても素晴らしいことです。この光景が将来もずっと続くことを、そして世界中の全ての人々に平和な時間が訪れることを願っています。