パガットのジャングルで青年たちの前に現れた精霊フウナ
(撮影:Photo by Steve Hardy)
このイベントはグアム政府観光局もスポンサーとなっており、シェラトン ラグーナ グアム リゾートを会場に5月28日・29日の2日間の日程で行われ、当日は500席以上の客席が満席、更に立ち見の観客もあるほどの大成功を納めました。
会場の左右正面の大画面モニタも存分に利用して、
後方席の観客も大満足のエンターテイメント。
この10周年記念イベントを行った「イネットノン ゲフパゴ」は数あるグアムのローカルダンスグループの中でも多くの受賞歴を持つ指折りの優秀な存在。
それだけでも彼らのパフォーマンスに期待していた私ですが、劇に盛り込まれた内容、そしてこの夜のショーでのグアムの若者のみなぎる美しさにすっかり心打たれてしまいました。
(イベントの様子の動画はこちら)
『Fanhasso, Fanhita, Fanacho:共に考え、そして立ち上がろう』
物語の内容は、あるグアムの若者が夢で見る精霊の言葉に導かれ、パガットという村のジャングルへ行き、友人を呼び寄せるところから始まります。そこで典型的なグアムの現代っ子である若者たちが、歴史を学び、伝統を尊ぶ心を島の精霊たちから学んでいくというストーリーです。
古代巨石文化ラッテストーンの時代を表現した踊り。
精悍なチャモロの若者が舞台ところ狭しとエネルギッシュな踊りを披露します。
チャモロの恋人岬の伝説、スペイン統治時代の悲恋の物語。
当時の人々の衣装を見るのも楽しみ。
精霊「フウナ」の導きと若者たちのやり取り、そして合間に繰り広げられる島の各時代を表現したダンスによって物語が進行していきます。ミュージカル的な融合芸術でありながらも、よりダンスに焦点が当てられたエンターテイメントです。
300年以上前にヨーロッパ人によってもたらされた宗教、ローマンカトリック。
今も残る各村で毎年行われるフィエスタもカトリックの守護聖人を祝う行事です。
驚き!チャモロソング界の美空ひばり、
フローラ・バーサも登場!
昔シレナという若い娘が母の言いつけを守らずに海で泳ぎ続けて人魚になってしまったというグアムの伝説の場面では、著名なチャモロソング歌手フローラ・バーサが登場、グアムローカルにとって懐かしの曲「シレナ」を披露して、観客も大興奮。
第二次世界大戦 アメリカと日本の戦闘下の辛い時代。
多くの人々が苦しみ、そして命を落としました。
戦争が終わり、自由を取り戻した喜びを表現。
アメリカ時代の衣装はよりモダンに。
パガットで精霊と対話することで、大切なものに気付いた現代っ子たち。
劇の中で、歴史と伝統の幻を精霊によって見せられた若者たちは、現代っ子としての価値観と、自分たちの中に息づく先祖と伝統を尊ぶ心との間で揺れ動きます。葛藤の中で、互いに励まし合い、ときにはぶつかり合いながら、やがて彼らは大きな気づきへと到達します。
「僕たちはパガットと祖先の伝統を忘れ去ることもできるし、そして、守り抜くこともできるんだ!」
請願署名イベントで売られていた
『パガットを守ろう』と記されたTシャツとステッカー。
ところで、この劇の舞台がパガットのジャングルであることは、この物語にとって大きな意味を持っています。
グアムの北東にあるパガットという地域は、今も美しい大自然と貴重な古代の集落跡などの歴史文化遺産が豊富に眠っています。しかし現在、この地域は、海兵隊の訓練予定地となっており、これからは島民の立ち入りが禁止となってしまうのです。
現在、この問題に島の人々が関心を寄せ、反対運動を行う人々によってバラク・オバマ大統領への請願署名を集める活動が地道に行われています。さきほどのグアムの若者たちの「僕たちはパガットと祖先の伝統を忘れ去ることもできるし、そして、守り抜くこともできるんだ!」という台詞は、この地域が訓練地として閉鎖されることに対してどのようなスタンスで行動するかを苦悩する、彼らの自問自答の言葉なのです。
20以上の受賞トロフィーや写真も展示され、記念カレンダーやDVD、Tシャツ、
ロゴ入り傘なども販売。美味しいブッフェディナー付きで充実のイベント。
イベントは終始温かい応援の眼差しに包まれて大成功。グアムの文化をぎゅっと凝縮したエンターテイメントを堪能できただけでなく、ショーが始まる前には
ブッフェ式のチャモロ料理ディナーも楽しむことができました。
こんなふうにこれからもアクセスしやすいホテルなどでのローカルイベントが増えると嬉しいですね。
それではまた、
アディオース!