DFSギャラリア・グアム内にある、クッキーやチョコレートが置かれたコーナーの一角には、ローカルアーティストの作品をほぼ月代わりで展示しているイベントコーナーがあります。グアム在住の気鋭のアーティストを招いて、旅行者に作品に触れる機会を設けているユニークで意義深いイベントです。絵画、葉編み、彫刻などアートの種類は実に様々。尽きる事のないローカルアーティストの才能が「アーティザン・オブ・グアム」というプログラムを長年に渡り継続させています。
今回は、若いローカルアーティストにお母さんのように慕われる繊細な感性の持ち主であるジュリー・ベナベンテさんの登場です。


スポンディルス貝とよばれる貝とビーズを
組み合わせたエレガントな作品です。
なお、古代グアムでは、スポンディルス貝を用いて
ディスクと呼ばれる平らなコインを作り、
貨幣として使用してきた歴史があります。


「ジル」 というニックネームで知られるジュリー・ベナベンテさんの展示会は、4月1日(日)まで開催されています。ジルさんは、独自に活動することの多いグアムのアーティストをまとめ、様々な芸術活動をコーディネートするなど、グアムのアートを牽引している美しい女性です。もちろん、ジルさん自身も、ジュエリーや葉編みを主に制作するアーティストでもあります。


美しい三日月型をしたネックレスはシナヒと呼ばれ、
ジャイアントクラム(オオシャコガイ)という貝を削って作られています。
古代のチャモロ社会では、社会的地位の高い首長などが着けていたと言われています。
通常よく見かけるのはジャイアントクラムのペンダントトップのみ。
しかしジルさんが手がけると、亀の甲羅やスポンディルス貝と組み合わせて、
この通り美しいネックレスに仕上がります。


こちらはジャイアントクラムを用いてラッテストーン(Latte Stone)を象ったペンダント。
ストラップはアジャスタブルなので、短くしても長くしても使えます。


スポンディルス貝で一つずつディスクを作りネックレスにしています。
スポンディルス貝特有のオレンジの色が美しい作品です。


手前の2つはグアムに原生するイフィットと呼ばれる木で
ペンダントトップが作られています。
堅く重い木質は磨き上げると美しい光沢を放つことから、
装飾品、家具などに多用されてきました。
現在は伐採が禁じられ、台風などで倒れた木だけを利用することができます。


ジルさんは、伝統と新しさの両方を兼ね備えたチャモロボディーオーナメンテーションアーティスト(ボディー装飾品アーティスト)です。今回の作品に使用されているスポンディラス貝やジャイアントクラム、イフィット、亀の甲羅などだけでなく、石や牛の骨、野ぶたの牙等の様々なローカルの材料を使って美しいジュエリーを作り上げます。伝統的なグアムの素材だけでなく、ビーズなどと組み合わせて独自のコンテンポラリーな作風でローカルジュエリーの世界を広げています。


写真が苦手、というジルさんですが、
DFSさんが入手した唯一の写真をお借りできました。


「アーティザン・オブ・グアム」のコーナーでは、
ジルさんの美しいジュエリーはショーケースに収められています。
ジュエリーといっても、お手頃な価格の作品がほとんどです。


「アーティザン・オブ・グアム」のサインには、
作家自身が会場を訪れる時間が書かれています。
ジルさん本人に作品についての質問をしたり、
思い出のジュエリー選びのアドバイスをもらったりもできますよ。


今回の展示が終わっても、ジルさんの作品を見たり、購入する機会はあります。
彼女は、マンギラオ村の10号線沿いに小さなコンテナを改造した「グイナハン・チャモル(GUINAHAN CHAMORU)」というお店を開いています。そこでは、彼女の作品と一緒に、70人以上のグアムのアーティストの作品も展示・販売されています。
ジルさんの祖母は、薬草や祈祷で病を直す「スルハナ(Suruhanus)」だったそうです。そのため、ジルさん自身も、チャモロの文化や伝統を受け継ぐ暮らしの中で育ってきたということです。


こちらがマンギラオ村にあるジルさんのお店です。
店の裏には作業場もあります。
作品づくりをしながら店番をするのが、ジルさんの長年の日課になっているそうです。


ジルさんがアクセサリー制作を行う高椅子からの店内の眺めです。
スタンプやグリーティングカード、CDなども扱っています。


ジルさんは、チャモロ言語文化会議を始めとして、パラオ、アメリカンサモアで開催された第9回、10回のパシフィックアートフェスティバル、ザ・日産ウーマンズショー、ザ・イネトゥノンジェフパゴカルチュラルアートプログラム、グアムミクロネシアアイランドフェアー、サイパンフレームツリーフェスティパルなど、数々の文化祭に展示してきました。 現在は、2016年にグアムでの開催が決定したパシフィックアートフェスティバルに向けて、創作活動に取り組んでいます。


また、「アーティザン・オブ・グアム」では、他にモニカ・バザさんの展示会も予定されています。
モニカさんは、幼少期からアートに目覚め、グアム大学とモントリオールのコンコルディア大学でその才能を開花させました。環境にやさしいアクリルの絵の具や水溶性のインクを好んで用い、自宅を兼ねたスタジオで絵文字から変化するモチーフを描きます。彼女は、絵文字には私たちの祖先や歴史の源があると考えて、その謎をひも解き続けているのです。現代の目を通して島のライフスタイルを表現する独特のモニカの世界観をお楽しみください。


モニカさんは、1987年にグアムに戻って以来、
グアムを拠点に芸術活動を続けています。
「アーティザン・オブ・グアム」に出展される作品もお楽しみに!


「アーティザン・オブ・グアム」スケジュール

■ジュリー"ジル"ベナベンテの世界
開催日:2012年3月7日~4月1日
アーティスト来店日時:3月8日・10日・15日・17日・22日・24日・29日・31日 7:00PM~10:00PM


■モニカバザの世界
日程:2012年4月2日~4月29日
アーティスト来店日時:4月5日・7日・12日・14日・19日・21日・26日・28日 7:00PM~10:00PM


<インフォメーション>

店名:DFSギャラリア・グアム
営業時間:10:00AM~11:00PM
定休日:なし
住所:1296 Pale San Vitores Road, Tumon, Guam 96931
ロケーション:タモン地区
電話番号:671-646-9640/41
URL:http://www.dfsguam.com/