歌舞伎役者を描いた独特の大首絵で有名な、江戸時代中期の浮世絵師「東洲齋写楽」。わずか10ヶ月あまりで約145点ほどの作品を発表した後、浮世絵の世界から忽然と姿を消した謎の浮世絵師として知られています。写楽をテーマに作成された複製やグラフィックアート、現代美術作家による絵画、彫刻、陶芸、版画など50点あまりが、2007年から国際交流基金の文化芸術交流事業として世界各地を巡回しています。世界31箇所を訪れた後、「写楽再見展(海外巡回展)」がグアム大学イスラアート美術館に到着しました。
大胆にデフォルメされた写楽の表現手法は
江戸時代に生きた人々の、個性的でユーモラスな人間像に迫ります。
こちらのリアリスティックで鮮やかな大判の2作品は、
今にもキャンバスから飛び出してきそうなほど生々しく、迫力満点の作品でした。
写真左が「大谷鬼次の奴江戸兵衛」、
写真右が「三世佐野川市松の祗園町の白人おなよ」を題材にした作品です。
東洲齋写楽に触発されたグラフィックアーティストの作品も数多くありました。
歌舞伎役者の仮面の下に隠された役者の素顔、
役者は江戸の時代をどのように見ていたのでしょうか?
アルファベットと東洲齋写楽の作風をテーマにした現代アート。
斬新なアイデアがとても面白いですね。
東洲齋写楽の目や口の描き方をモチーフにしたモダンアート。
多彩な口や目の表現方法に驚かされます。
こちらは、ちょんまげのラインナップ。
江戸時代、ちょんまげの結い方にも流行やスタイルがあったのでは?と
思わせてくれる面白い作品です。
私が最も気に入ったのがこちらの作品。
本名、生没年、出生地などすべての情報が謎に包まれている
東洲齋写楽こそが、最高の芸術作品ですよね。
見覚えのある役者絵の複製がずらりと並んでいます。
人間味溢れるポーズや仕草、表情が江戸の人たちを
芝居へと駆り立てたに違いありません。
会場であるグアム大学イスラアート美術館は、
民家を改装したような小さなミュージアムです。
場所は、タモン地区から車で20分ほどのマンギラオ村にあります。
見応えのある貴重な作品の展示もありますので要チェックです!
グアム大学イスラアート美術館は、グアム大学キャンパス内の
ディーンズサークルと呼ばれるエリアにあります。
つい見逃してしまいそうな小さな建物ですが、このサインを目印に訪れてみてください。
江戸の街に旋風を巻き起こし、忽然と姿を消した謎の浮世絵師「東洲齋写楽」の作品を、自由に解釈し制作されたポスター、絵画、立体作品など様々な芸術作品を楽しむことができました。ある作品は、東洲齋写楽の表現力に着眼し、ある作品はその時代を生きた役者にスポットライトを当て、ある作品は江戸という時代の庶民の人間性を描くことに注視しています。いずれも、現代の作家たちの柔軟な着想と確かな表現で東洲齋写楽を再解釈されています。現代でもよく使われる「粋」という言葉が生まれたのは江戸時代。元々は江戸に暮らす大工職人たちから生まれた、美意識を指す言葉だったようです。今回の作品展にはそんな江戸の「粋」な空気感が満ち溢れ、200年前の江戸時代に思いを馳せたひとときになりました。是非皆様もこの空気感を体感しに訪れてみてくださいね。