グアムの歴史を語る上で外すことのできない「スペイン統治時代」。その面影を数多く残すグアムの首都、ハガニア地区にある「スペイン広場(Plaza De España)」は、観光スポットとして有名です。そのスペイン広場が数ヶ月に渡る修復工事を終え、スペインを、そしてその時代を彷彿とさせる姿に生まれ変わりました。この周辺地域は、観光ツアーなどには必ず入っている観光スポットとなり、ガイドブックなどでも多く紹介されていますが、装いを新たに美しくなったこのエリアを改めて歩いてみました。

スペイン広場周辺には、「聖母マリア大聖堂(Dulce Nombre de Maria Cathedral Basilica)」 「ヨハネ・パウロ2世教皇像(Pope John Paul Statue)」 「サン・アントニオ橋(San Antonio Bridge)」など、 スペイン統治の面影が残る歴史建造物が数多く残っています。

スペイン広場の奥正面に立つ門は、スペイン語で「アルマセン(Almacen)」と呼ばれる、かつて門の奥にあった武器庫の入り口として1736年に建設されました。武器庫は1930年に取り壊されていますが、その跡地にシエスタ用のスペースや噴水広場などがあります。その端には、考古学発掘調査で発見された武器庫の石床も残っています。 この辺りの建築物の老朽化は激しく、修復工事前は古びた雰囲気でしたが、このたび散策するにふさわしいスポットとして新たなスタートを切りました。

こちらは「アルマセンのアーチ(Arches of The Almacen)」と呼ばれる3つのアーチ。 ひび割れ、苔に覆われていましたが、こちらも真っ白に蘇りました。 アーチはスペイン建築に多く用いられた様式で、 グアムの歴史の象徴として、現在のグアム準州知事オフィスなどにも用いられています。 中央のアーチには、スペイン統治時代の棟飾りが残されています。

アーチをくぐると、修復された噴水(写真手前)やシエスタ用のスペース(写真奥)が あり、美しい庭園を楽しむことができます。 噴水のタイルも、スペインから用いられたものです。

こちらは「アルマセン」と呼ばれた武器庫の石床です。 庭園を造る際の調査で、土中に埋まっているのを発見されました。 ひんやりとした石を触っていると、 スペイン文化に彩られた数100年前のこの周辺の風景が目に浮かんできます。

こちらは、スペイン総督夫人が来客をチョコレートドリンクでもてなしたと 言われている「チョコレートハウス(Chocolate House)」。 珊瑚石をモルタルで覆った「マンポステリア(Manposteria)」と呼ばれる、 スペイン建築でよく見られる工法が用いられています。 天井部分はグアムを代表する「イフィット」と呼ばれる木材が使われ、 屋根瓦はスペイン時代に使われたものと同じ瓦で復元されています。

天井の梁には、非常に堅く頑丈な「イフィット」という木が用いられています。

隣には「スペイン総督邸跡(Site of Governor's Palace)」がありますが、第二次世界大戦によりスペイン総督邸の大部分が破壊され、現在残るのは下の写真の建物のみです。スペイン語で屋上を意味する「アソテナ(Azotea)」と呼ばれた場所です。本来、屋根はなくオープンエアのテラスだったのですが、戦後、瓦屋根が新たに造られました。

1736年に建造された、スペイン総督オフィスおよび公邸。 1885年「ドン・エンリケ・ソラーノ総督(Governor Don Enrique Solano)」により さらに大きな建造物へと建て替えられました。 アメリカ統治時代にはアメリカ海軍の、旧日本軍統治時代には旧日本軍司令部の本部が 置かれるなど、常に政治の中心地となっていました。 テラス部分は戦火を逃れたものの損傷が激しく、 時の流れとともに老朽化していましたが、現在は美しく復元されました。

その奥には「ガーデンハウス(Garden House)」があります。名前の通り、造園、清掃などの道具庫として使用されていました。戦後、グアム博物館としてスペイン統治の歴史を伝える展示がされていたこともありますが、激しい老朽化により観光客も近づきにくくなっていました。現在は真っ白に塗り替えられ、長く使用されていた屋根瓦も美しく並び直されました。

こちらが、修復工事を終えた「ガーデンハウス」。 カピス貝で造られた窓は、当時の姿同様に復元されています。

「アルマセンのアーチ」から奥は、マンポステリアの白壁に囲まれた美しいスポットに生まれ変わりました。強い日差しを避けて立ち寄り、その時代に思いを馳せていると、ふとその時代にタイムスリップしたかのような錯覚さえ覚えてしまう不思議な場所です。

長いグアムの歴史の中で、忘れてはならない333年に渡るスペイン統治時代。 その時代を思わせる、白い壁と石畳の小道があるこの風景も グアムの大切な歴史のひとつとして引き継がれています。

スペイン広場中央には「キオスコ(Kiosko)」と呼ばれる野外音楽堂もありました。アメリカ統治時代には、野球場やバドミントンコートが作られ広場の端に移されることとなり、その後、戦争により大被害を受けました。現在の建物は、1980年に復元されたものとなります。

こちらが、広場の中心に位置する「キオスコ」。 スペイン広場がスペイン、アメリカ、旧日本軍の政治の中心であった歴史を重んじ、 「キオスコ」は現在も歴代グアム準州知事の就任式や、公式行事に使用されています。

歴史スポットが集まったこのエリアは「ハガニア・ヘリテイジ・ウォーキング・トレイル(Haganta Heritage Walking Trail)」という散策コースになっています。コース内には、古代チャモロ社会の首長であった「キプハの像(Statue of Chief Quipuha)」や「旧日本軍防空壕跡」などもあり、スペイン統治時代以外の歴史に触れることもできます。 また、スペイン広場の隣の「スキナー広場(Skinner Plaza)」では、現在「グアム博物館」の建設が着々と進められています。美しくなったこのエリアにグアム博物館がオープンすれば、より一層グアムの歴史地区として、多くの人が訪れるようになるでしょう。皆様も是非こちらでグアムの歴史を感じみてくださいね。

聖母マリア大聖堂の隣、スペイン広場入り口に掲げられた ハガニア・ヘリテイジ・ウォーキング・トレイルの看板です。

こちらは、ハガニア・ヘリテイジ・ウォーキング・トレイルのマップです。 グアムの歴史が凝縮されたこちらのスポットを、是非探索してみてくださいね。

グアム博物館についてはこちら。 http://weekly.visitguam.jp/2012/11/2014.html