毎年この時期に開催される「チャモロ・ルナ・カレンダー・フェスティバル(英語:Chamorro Lunar Calender Festival / チャモロ語:Gupot Fanha'aniyan Pulan Chamoru)」。第6回目となる今年は、雨のぱらつく中での開催となりましたが、沢山の方々が訪れ大いに賑わっていました。
このフェスティバルで無料配布される、古代チャモロ独特の暦が書かれたカレンダーを早速見てみると、私たちが現在使用している太陽暦の「1月30日」が、チャモロ暦では元旦になるようです。内容はチャモロ語で書かれており、日にちとともに、日々の潮の満ち引きや月の満ち欠けのほか、各ページの下にはその時期に捕れる旬の魚も紹介されています。古代チャモロ人は月や星、太陽などの動きを読みながら漁を行っていたと言われていますので、このカレンダーの内容は全て頭に入っていたのでしょう。

こちらが配布されたカレンダー。
手前から2014年、2012年、2010年のものです。

WEEKLY GUAMでも何度か紹介していますが、チャモロ人に古くから受け継がれているアクセサリーに「シナヒ(Sinahi)」と呼ばれるものがあります。「ジャイアント・クラム(オオシャコガイ)」で作られた三日月型のネックレスです。月の形をしたアクセサリーは、月や星、太陽の動きを生活に取り入れていたと言われる古代チャモロの人々らしいものですが、カレンダーを見てみると「シナヒ」は三日月ではなく、「新月(月が見えない状態)」を意味するようです。

「ルナ(Lunar)」とは「月」を意味しており、
配布されたカレンダーでは潮の満ち引き、月の満ち欠けなどが紹介されています。
1月30日は新月で上に「Sinahi」 と書かれています。

日にちの上のページには
子供たちがイベントテーマを題材に描いたイラストの優秀作品が載っています。
子供たちが自分なりに地球やグアムのこと考え、それを表現しています。
「Let's Do Something」と書かれていますが、まさしくそうですね。
私たちひとりひとりが、何かを始めなくてはなりません。

このイベントは、「グアム・フィッシャーマンズ・コーポラティブ・アソシエーション(The Guam Fishermen's Cooperative Association)」により開催され、カレンダーは「ウェスタン・パシフィック・リージョナル・フィッシャリー・マネージメント・カウンシル(The Western Pacific Regional Fishery Management Council)」の協力のもと、「チャモロ・ルナ・カレンダー・コミッティ(Chamorro Lunar Calendar Committee)」により制作されています。
このように、現在でも漁業関係者が携わっていることからも分かるように、古代チャモロ人の暮らしは、常に海に密着したものだったのです。

そしてこちらのイベントでは、古代チャモロ人により自然から導き出された暮らしの知恵を、変化していく地球環境の中でいかに私たちの暮らしに取り入れ、守っていくかをテーマに開催されました。環境やリサイクルに関する情報を提供するブースが数多く並び、グアムで採れた新鮮な野菜やフルーツを並べるブースが軒を連ね、古代チャモロ文化を継承しているアーティストの作品が並べられました。中央のステージはチャモロダンスショーも開催されました。

イベント会場の海沿いのエリアに
環境やリサイクルに関するブースが集まっていました。

通り沿いに置かれているサインはリサイクルを呼びかけるもの。
上の写真ではデデド村にあるトランスファーステーションが
瓶の回収を呼びかけています。

「グアム農務省(Guam Department of Agriculture)」
のブースでは、火事から山を守るための活動や
山を守るための植樹活動の様子が紹介され、
グアムに古くから自生する植物の成長を脅かす植物などのパンフレットが配布されていました。

こちらのブースは昨年9月に始まった
「ピティ・プライド・テプンガン・ワイド(Piti Pride Tenpungan Wide)」という
キャンペーンのもの。
200種類以上の魚や数多くの珊瑚や海藻などが生息し、種類海洋保護区に指定されているピティ湾。
その現状や美しい海中世界を守るための活動が紹介されていました。

男性が手にしているのは「ブラウン・ツリー・スネーク(Brown Tree Snake)」
(和名:ミナミオオガシラ)。
貿易により入ってきた元来グアムには生息しない外来種で、
グアムの固有種を含む7種の鳥類を絶滅させ、生態系を崩し、停電の原因などになっている蛇です。
捕獲作戦は行われていますが、絶滅危惧種となっている「ココバード(Ko'ko' Bird)」をはじめ
失われつつあるものが元の状態に戻るには、まだまだ時間がかかります。
※主な観光地・ホテル街ではほとんど見かけません。

遅ればせながら地産地消の考えが定着しつつあるグアム。
地元で採れた新鮮な野菜やフルーツを積極的に買うことは
食文化の継承、自然環境後保護という視点でも大きな意味があります。

ローカルの男の子たちがヤシの葉で帽子、籠などを編んでいました。
これらは古代チャモロ人の暮らしに欠かせなかったものです。

こちらが先ほどご紹介した「シナヒ」というネックレスです。
現在も男性のアクセサリーとして身につけている人をよく見かけます。
こちらのイベントでは、ローカルアーティストにより現代風にアレンジされた
お洒落なシナヒも沢山並んでいました。

外国による統治や近代化の影響で、見る機会が失われてしまった時期もあったチャモロダンス。
現在は見事に復活し、各イベントで披露されています。

イベントには欠かせない食べ物のブースもたくさんありました。
こちらでは「ピカジェリー(Pika Jelly)」と呼ばれる
手作りの唐辛子ゼリーを販売しています。
クラッカーにのせて、サワークリームと一緒に試食することができました。

こちらは、昔ながらの方法による、豚の丸焼きのデモンストレーションです。
穴を掘って熱く熱した石の上に豚を置き、バナナの葉で覆って蒸し焼きにします。
残念ながら出来上がりを見ることができませんでしたが、
オーブンで焼くのが主流となった現在、
このようなデモンストレーションはローカルにとっても珍しい光景でした。

チャモロビレッジの隣の海沿いの会場には、グアムの自然やカルチャーをベースにした実に様々なブースが並んでいました。ここ数年、毎年このイベントに足を運んでいますが、なかなかツーリストの方々の姿を見られないことが残念でした。しかし、今年は日本人ツーリストの方々がローカルとのコミュニケーションを楽しんでいる姿を何度か見ることができました。きっとタモン地区周辺では体験できない、グアムの違った一面に出会えたと思います。

広い会場には食べ物の販売、パフォーマンス、デモンストレーションなど
様々なブースが並びました。
ブースを順に巡りながら自分の日々の生活習慣を振り返るなど
いつものローカルイベントとは少し違う、有意義な時間を過ごせました。

毎年同じ時期に開催されていますので、是非一度ご家族やご友人と訪れて、チャモロ独特の歴史や文化に触れて楽しんでみてくださいね!