グアムは年間80万人を超える日本人ツーリストのみなさまをお迎えし、観光業で働く島民はもちろん、日本人と結婚し家庭を築き、家族や親戚の集まりで日本人と付き合いのある人もたくさんいます。そのため、日本に関心のある人も多く「日本に旅行に行ってきた」という話しもよく聞きます。こちらに住んでいると「和食の作り方を教えて」とか、さらには「日本に旅行に行くから通訳として付いてきて」と言われることまであります。 毎年3月に開催されるグアム日本人会(Japan Club of Guam)主催のアート&クラフトフェア(Art & Craft Fair)にはそんな日本に関心のあるローカルがたくさん集まって、思い思いに楽しみます。3月12日(土)に開催された今年のフェアは18回目となりますが、なかには初めての出品もあり、訪れた人たちに喜ばれていました。



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18回目となるアート&クラフトフェア。
今年も日本の素晴らしい文化が披露されました。



「春うらら」をテーマに開催された今年のアート&クラフトフェア。日本の伝統芸能である日本舞踊、 日本の芸道の1つである茶道、そして日本を代表する武道の1つとして合気道などのデモンストレーションをはじめ、グアム在住日本人によるクラフト作品、アート作品の展示販売、書道や折り紙、そして今日本でもその多様性が見直されている風呂敷使いの体験コーナーなど、さまざまな日本の文化が一同に会したこのフェア。ほぼ毎年足を運んでいますが、毎回新鮮な気持ちで日本の素晴らしさを実感しています。



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江戸時代に始まったと言われる木目込み人形。
木で形作られた人形に切り目を入れ、そこに布を埋め込んでいくことから
木目込み人形と呼ばれるようになりました。
アート&クラフトフェアには毎年出品されていますが、
中でも私が楽しみにしているのは、その年の干支の人形。
今年はかわいいサルの人形がたくさん展示されていました。



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こちらは和紙のちぎり絵。
風景、花、動物、季節の行事など日本らしい作品に混ざって
ハロウィンのカボチャや、
アメリカの国鳥であり国章のデザインに用いられている白頭鷲まで。
グアムのアート&クラフトフェアらしい作品も並びます。



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小さい頃から慣れ親しんだ折り紙も、こうなると立派なアート。
遠くから見ると本物の花束と思ったら、折り紙でできたものでした。
作った方の観察力、創造力、指先の器用さに感服です。



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毎年たくさんのローカルの子供達が挑戦している書道。
訪れた日本人がお手本を見せる場面もありました。
慣れない筆に悪戦苦闘といった感じでしたが
こうして日本の文化も興味を持ってもらえることは嬉しいですね。



今年、初出品となったのは「ことだま遊書展」。ポップクリエーター、ことだま千江子さんの柔らかなタッチ、優しい色使いで描かれたイラストとともに、言葉が綴られています。言霊(ことだま)とは日本で古代から信じられている言葉に宿る力のこと。ことだま千江子さんの作品に書かれたポジティブな言葉を声に出して読んでみると、優しい気持ちになったり、励まされているような気持ちになったり、言霊パワーに癒されました。



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「あなたはあなたなんだから」
「うまくいかないときは初心にかえる」
「心のゴミを捨てましょう」などさまざまな言葉が書かれています。
言葉のパワーと共に、日本語の美しさも感じられる作品です。



7_P1140160.JPG会場ではことだまさんがお客様のリクエストに応えて作品を作っていました。
こちらは、猫が大好きという方に猫のイラストと「かんぺき」という言葉。



こちらもグアムで初めてとなる日本の画家、寺井力三郎氏の作品展です。一水会という伝統ある絵画団体に所属し、点描という技法で多くの大作を残しています。グアムで作品展を開くきっかけとなったのは2010年に初めてグアムを訪れ、アンダーウォーターワールド(Underwater World)で見た光景。水族館ではありますが、海底に沈む零戦の上をサメが泳ぐ景色が印象に残り、日本に帰ってから作品化。「鎮魂の海」と名付けられたこの作品は一水会展にも出展され、高い評価を受けました。



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今回のフェアで展示された「鎮魂の海」はこちら。
グアムと日本の悲しい歴史が寺井氏の静かで端正なタッチで表現されています。
日本の展示会に出展されたものはこの何倍もの大きさの大作です。



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こちらが作品作りの様子。
80才を超える寺井氏にとって、
多くの若者が命を落とした零戦には特別な思いがあるのでしょう。



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寺井氏の作品には自分の家族を題材にしたものも多く、
当たり前の暮らしの中で捉えたある瞬間を、
静謐にして軽やかに描き出された作品が印象的です。



ステージでは落語家の入船亭扇蔵のグアム初公演も行われました。昨年3月に真打ちに昇進し、4代目扇蔵を襲名。日本の落語界で幅広く活躍しています。



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客席にはローカルの人の姿もチラホラ。
落語は初めてという方も多かったことでしょう。
もちろん日本語なので、どこまで理解できたかはわかりませんが...



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入船亭扇蔵の名前の入った扇子、風呂敷、
手ぬぐいも販売されていました。



他にもビーズアクセサリーやスワロフスキーのビーズを用いたジュエリーなど、在住日本人によるハンドメイドの作品、わざわざ日本からやってきた三姉妹によるコーラス、親または祖父母に日本人を持つ人たちで結成されたグアム日系人会の紹介などもありました。毎年秋に開催される「グアム日本人会秋祭り」に次ぐ、グアム在住日本人によるビッグイベントに成長しました。日本の魅力をたっぷり発信し、今年も無事終了しました。