毎年2月の恒例イベントとなっている「ディナニャ・ミナゴフ・チャモロダンスフェスティバル(Fiestan Dinana' Minagof)」。島南部のイナラハン(Village of Inarajan)にあるグアム歴史村 イナラハン・ゲフパゴ公園(Guam Historical Village at Gef Pa'go Park in Historic Inarajan)にて開催されています。
今年も2月12日(日)に開催され、一昨年、昨年に引き続き、日本を拠点に活動するチャモロダンスグループ「ファマグウン・タノ・ザニ・タシ(Famagu'on Tano' yan I Tasi)」が登場しました。
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チャモロダンスだけでなく、グアムの歴史、チャモロのさまざまな文化を学んでいる
ファマグウン・タノ・ザニ・タシの皆さん。
今年も胸に響く、熱いパフォーマンスを披露してくれました。
この日、グアム歴史村 イナラハン・ゲフパゴ公園にはいくつかブースが出店していました。レンタカーでドライブがてら立ち寄ったツーリストたちにはとても興味深いものばかり。その中からいくつかご紹介しますね。
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こちらがグアム歴史村 イナラハン・ゲフパゴ公園。
会場に着いたお昼すぎは小雨がぱらつく生憎の空模様...
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ツーリストの方達にとって興味深いのが
チャモロの人たちが好んでつけているネックレス。
貝や動物の骨を削り作られています。
私がグアムに来た頃は、このようなイベントで見かけるネックレスも「シナヒ」と呼ばれるチャモロの伝統的な三日月型がほとんどでした。しかしここ数年、急速にチャモロ文化が見直され、作り手たちの熱意もアップ。伝統を守りつつ、さまざまなデザインにアレンジされたお洒落なものが増えてきました。のんびりとしたおおらかなチャモロの人たちですが、デザインは細かく繊細で、見入ってしまうほど。
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こちらの女性が販売しているのは自宅の庭で採れたフルーツや、
それらで作った自家製ピクルスです。
グアムでは青く若いパパイヤやマンゴーのピクルスが人気で、酸っぱ辛い味付けが特徴。グアムではお馴染みの食べ物ですが、ツーリストの方は機会があればぜひ挑戦してみてくださいね。
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こちらは私も初めて見た野豚と鹿の剥製。
男性が数人集まり、熱心に話し込んでいました。
チャモロ語での会話だったので内容はまったくわかりませんでしたが、
チャモロ男性はこういう物に心が騒ぐのですね。
イナラハン村など島南部にはまだまだ昔ながらの暮らしが残り、同じグアムでもタモンやタムニングとは別世界のような島時間が流れるエリアです。そこで開催されるイベントは、ローカルらしさたっぷり。人々の暮らしや興味を見ることができます。
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1時間後にはこの通りの青空に。
最近スコールが続いていますが、しばらくすると青空が広がりますので
ほんの少し、ご辛抱を...。
さて、ステージが賑やかになってきました。まずはローカルシンガーたちが登場し、来場者を集め盛り上げていきます。
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どこにでもいそうな普通の人たちですが、歌声は素晴らしかったです。
島南部独特の島時間、手付かずの大自然に包まれて
チャモロの心地よいサウンドが響きます。
そしていよいよファマグウン・タノ・ザニ・タシの登場です。
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彼らのパフォーマンスが始まると、多くの人が集まってきました。
どうやら来場者のほとんどのお目当てがこのパフォーマンスのようです。
ファマグウン・タノ・ザン・タシは、グアム政府観光局が主催する「グアムチャモロダンス・アカデミー」にも参加している帝京大学教授 中山京子さんが結成したチャモロダンスグループ。チャモロダンス・マスターであるフランシスコ B. ラボン(Master Francisco B. Rabon)氏に正式に認定されており、帝京大学の学生や卒業生を中心に成されています。
このグループの素晴らしいところは、活動内容がチャモロダンスだけにとどまらず、グアムの歴史や文化をグアムの人々を通して学んでいること。年に数回グアムを訪れ、パフォーマンスを披露するだけでなく、さまざまな場所へ足を運び、ローカルの人たちとコミュニケーションを重ねています。
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今回の旅でも ローカルアーティストの製作現場を訪れたり、
歴史と文化に造詣の深いローカルの人たちの案内で島を巡ったり、
精力的に活動しました。
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そんな彼らの思いが通じたのか、
会場はいつの間にか満員御礼状態。
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こちらはパフォーマンスの一コマ。
中央の棒に掛けてあるのはヤシの葉で編んだ帽子、
アメリカ軍のヘルメット、そして旧日本軍の帽子です。
グアムには日本人が直面せざるえない悲しい歴史があります。
その悲しい過去を、若い日本人の学生は
ローカルの人とのコミュニケーションを通して彼らなりに理解し、
ダンスで表現しました。
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パフォーマンスにはグアムのチャモロ人ダンサーも一緒に参加。
息もぴったり合ったダンスが続きます。
そしていよいよパフォーマンスの最後、チャモロのイベントで歌われることの多い オーサイナ(O'Asaina)という曲の合唱が始まった時のこと。誰が声をかけたわけでもなく、観客は席から立ち上がり、ステージのダンサーと一緒に歌い始めました。
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オーサイナの曲が始まると次々と観客は立ち上がり、
手を胸に当て、そしてその手を空に向かってあげる
振り付けも一緒に行いました。
この曲は祖先への敬意、感謝を表す曲。チャモロ語でサイナは魂、年長者を意味し、この曲はチャモロ人なら誰でも知っています。その曲を日本人とグアムの人たちが一緒に歌い、誇らしげに、そして恭しく手を空へ向かってあげる光景はとても感動的でした。ファマグウン・タノ・ザニ・タシというダンスグループが単にチャモロダンスを踊るだけではなく、心からグアムを愛し、人々と心を通わせるグループであることを印象付けた瞬間でした。
グアムにはたくさんのチャモロダンスグループがあり、各イベントなどでそれぞれが素晴らしいパフォーマンスを披露しています。そんな中、日本人らしい繊細な動きや演出で、一味違うチャモロダンスを見せてくれるファマグウン・タノ・ザニ・タシ。今後も彼らの活動には注目していきたいと思います。